六花のアルバムのリリースが2月13日に始まる。アルバムの制作の経緯やそのとき感じたことを手記としてここに残しておこうと思う。
たしか、GLASS TOMORROWのツアーが終わって、ぼんやりとした安堵に満ちた時期だったと思う。
季節は冬から春へ向かう最中。日中、僕はリビングで音楽を聴いていた。窓を開ければ、柔らかな風が入り、次の季節のあたたかい香りがした。20代の頃、花鳥風月の魅了は僕にとってまだ遠いものだった。煌びやかな都市に満ちた強い刺激に惹かれていた。ただその頃も静かな音が好きだった。
それは僕のピアノの先生の影響が強い。その先生は福岡に住んでいて、子供の頃から宮崎からレッスンに通っていた。
先生は音に厳密な人だった。少しでも打鍵の速度を上げてきつい音を鳴らすと、そうじゃない、と演奏をやめさせた。一小節弾くだけで、何度を弾き直され、次の小節へ行くまで一時間近くかかることもあった。でも、僕はそのとき、小さな音を出すことの難しさと、小さくて美しい音を鳴らすことの喜びを知った。
20代の頃は、刺激を求める自分と、望む音との繋がりがうまく持つことが出来ず、アンバランスな時期だった。20代後半、ワルシャワへ留学を経て、少しずつその乖離はなくなり、自分の好きな音楽はこの辺だ、と気づけた。
小さくて美しい音。これは僕がピアノを弾く上で一番大切にしていることで、どうしようなく惹かれるものだ。僕はリビングの窓から入り込む風に手を入れて、握りしめるような所作の後、自然とピアノに向かった。そして、即興的に音を鳴らしながら、次に届く季節を思った。その時間はとても満ち足りた美しいものだった。旅の中で出会った光景が頭をよぎり、そこにいつも四季が広がっていたことを思い出した。四季をテーマに、何か作れないだろうか。
最初はそんな漠然としたものだった。でも、次第に強く確信を持つようになる。このアルバムを作りたい、と。