音を録るとなると、大切なのはどんな音を録りたいか、ということが肝心であり、初めから僕の中では決まっていた。
札幌に、芸森スタジオという音楽スタジオがある。ビートルズのジョージ・マーティンが監修したスタジオで、札幌軟石の響きと、地下にあるエコールームが貴重で、とても素晴らしい。
坂本龍一さんが好んだスタジオとしても知られており、僕が普段聴くアルバムの一つである大貫妙子さんとの「 UTAU」もこのスタジオを通して完成した。思えば、そのときこのピアノの響きは独特でいいな、と印象が残っていた。
芸森スタジオでは食や音楽、アートを繋ぐZERO CROSSというプロジェクトがあり、僕はそのイベントで何度か出演させていただいた。普段は音楽家しか入ることの難しいスタジオ内で、ライブをするという画期的なイベントだった。
その際のライブが、スタジオのグランドピアノを中心に置き、ピアノの天蓋を外し、お客さんはピアノをぐるりと囲むように聴くというものだった。そして、その際に演奏した音を一度録って、地下のエコールームに入れ、そこからエコーを抽出し四方のスピーカーから流す。生のピアノの音だけではなく、音の残響をしっかりととらえることの出来る斬新なライブだった。そのときの音は、とても美しかった。僕はこのかたちでいつかレコーディングがしたい、と思った。
後日、芸森スタジオに連絡し、レーコーディングの日にちを決めた。続く。